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電子部品は世の中にあふれており、日常生活で目にするあらゆるものに使用されています。製造部品の組付けや加工・検査をおこなうのが電子部品製造オペレーターです。
この記事では、電子部品製造オペレーターの仕事について解説しています。電子部品関連の企業に就職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
電子部品製造の仕事内容
電子部品製造の仕事内容は多岐に渡ります。ここでは大きく三つに分けて説明いたします。
部品の組み立てや組付けをする
組み立てとは、製品(基板など)に電子部品を取り付けることです。作業者一人の手で、ある程度の状態まで基板を組んでいくイメージです。
組付けとは、コンベアに乗って流れてくる基板に電子部品を取り付けることを指します。組み立てと違って担当する取付部品が決まっており、流れる基板に抵抗やコンデンサなど脚の長い部品(DIP部品といいます)を差し込んでいくイメージです。
作業はマニュアル化されていることが多く電気図面(組立図面)もあるため、一度覚えてしまえば比較的簡単にできる作業です。しかし、組み立て時に行うはんだ付けは技術が必要な作業であり、習得には相応の練習を強いられます。
電子部品の加工や検査を行う
電子部品の加工とは、材料メーカーから納品された材料(銅板など)の切り出し、切削やプレスなどの加工を行うことです。切削とは材料を切ったり削ったりすること、プレスとは材料に荷重をかけて成形することをいいます。
検査とは、完成した基板に部品がきちんと取り付けられているか、品質に問題はないか確認することです。はんだの付き具合や細かい印字(型番など)は画像認識ができる検査装置、外観など全体的に見る場合は目視で確認します。
クリーンルームで製造・管理する
クリーンルームとは空気中のパーティクル(チリ、ホコリ)が一定数以下になるように管理されている部屋です。クリーンルームの中に入るには、頭から指先・足先までを覆う専用の白衣を着て、入り口のエアシャワーでパーティクルを落とす必要があります。
クリーンルームには電子部品製造に必要な装置が設置されており、製造設備の操作や進捗の管理をおこないますが、一般室(クリーンルーム以外の部屋)とは違った慣れが必要です。クリーンルームでは一般室で不自由なくできることが、同じようにはできないからです。
例えば汗を拭きたくても、クリーンルームでは白衣を脱げません。また、食事やトイレに行きたいときは、クリーンルームの前にある更衣室で、度白衣を脱がなければなりません。そして、クリーンルームに戻ってくるときは、再び白衣を着てエアシャワーを浴びる必要があります。
電子部品の製造に関わるオペレーターとは?
電子部品の製造に関わるオペレーターとはどのような仕事なのでしょうか。ここでは業務内容と使用する設備(工作機械)について説明いたします。
オペレーターの業務内容
材料メーカーから納品された材料は、前述の通り切削加工やプレス加工をして製品になります。このような加工をするのがオペレーターの仕事です。
切削加工やプレス加工は人の手だけでできないため、工作機械を使用するのが通常です。工場にもよりますが、日常点検や比較的小さなトラブル・故障対応をオペレーターが担当する場合もあります。
オペレーターが使用する設備
ここではオペレーターが使用する工作機械を一つずつ紹介いたします。
プレス加工機
プレス加工機は材料を金型で挟み込み、片方(通常は下)を固定してもう片方から荷重をかけて成形します。リールに巻かれた材料が、次々とプレス機に送られて成形されます。
切断機
大きな材料を加工可能な大きさに小分けするときに使うのが切断機です。回転する円盤状の刃物を材料に当てて、物理的に切断します。
マシニングセンタ
切断機で切り分けた材料を加工するときに使うのがマシニングセンタです。マシニングセンタはNCフライス盤が発展したものです。NCとはNumerical Controlの略であり数値制御を意味します。NCと名の付く工作機械では、事前に作成したプログラムにより刃物の座標を数値制御するのです。
フライス盤とは、エンドミルと呼ばれる円柱形の刃物(工具)を回転させ、材料を切削する工作機械です。丸以外のさまざまな形状に加工できるのが特徴です。丸く加工したい場合は後述のNC旋盤を使用します。
通常、NCフライス盤には工具は一つしか付けられません。そのため、他のエンドミルやドリルを使用するときには一度工作機械を停め、人間が工具交換をする必要があります。しかし、マシニングセンタには複数の工具をセットできるため、工具交換のための時間を短縮できるのです。
NC旋盤
NCフライス盤では工具が回転しましたが、反対に材料が回転するのがNC旋盤です。加工後の部品は円柱や円錐など丸い形をしています。ボルト等もNC旋盤で加工します。
ラッピング加工機
ラップ加工とは、マシニングセンタなどで加工した部品の表面を平滑にするための加工です。
基本的に、部品の表面は一見平滑に見えても、計測器で表面を計測すると波を打つような形状をしています。電子部品の中には、このような形状だと不都合な部品もあります。そこで、ラップ加工をして表面を平滑にするのです。
具体的には、平坦な円盤(定盤)の上に加工したい部品を置き、アルミナなどの研磨剤をかけたのち、もう一枚の定盤を使って荷重をかけながら回転させます。研磨剤は部品より硬いため、部品表面の凹凸を削って平滑化します。
電子部品製造オペレーターの収入
電子製造部品オペレーターの月給は180,000円〜350,000円程度とされています。この月給を時給に換算すると次のようになります。350,000円/月 ÷ 20日/月 ÷ 8時間/日 = 約2,100円/時
厚生労働省(※1)によると、製造業の平均月収は308,5000円です。したがって、「平均とほぼ同じくらい」といえるでしょう。
ただし、年齢や地域、就職先によって変わります。例えばトヨタ自動車株式会社の場合、平均年収は約857万円です。
※1参考:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査の概況
※2参考:トヨタ自動車株式会社|有価証券報告書
電子部品製造オペレーターになるメリット
電子部品製造オペレーターになるには、さまざまなメリットがあります。
- やりがいを感じられる
- 技術力が向上する
- 工作機械に詳しくなる
- 電子部品のトレンドを知ることができる
- 安全に対する意識が高くなる
まず、自ら加工した部品が検査に合格して出荷できたときなど、製品の製造(部品加工)に直接関われることは大きなやりがいにつがります。また、材料をセットするときや工具の原点をセットするときなど、手を動かすことが多いため技術力の向上が期待できるでしょう。
日々のメンテナンス、オペレーターレベルで解決できる小トラブルの対処方法など、さまざまな知識が身につくのもメリットの一つです。さらに、シリコンウェーハのサイズやICチップの配線ピッチ(間隔)など、最新のトレンドを知ることができます。
最後に、安全に対する意識が高くなるでしょう。加工機械は一歩間違えると大怪我をすることがあるからです。
例えば、軍手をつけて工作機械に材料をセットしたとき、誤って工具を回転させると軍手や指が巻き込まれることになりかねません。このように工作機械を扱うときには慎重にならざるを得ず、自然と安全に対する意識が高くなるのです。
電子部品製造オペレーターに活用できる資格
電子部品製造オペレーターの仕事には、特に資格は必要ありません。前述の工作機械も、資格のいらないものばかりです。しかし、習得しておくと工場で活用できる資格はいくつかあります。
フォークリフト運転技能講習修了証
フォークリフト運転技能講習修了証があれば、積載重量1トン以上のフォークリフトを運転できます。学科講習11時間と実技講習24時間の合計35時間で修得できる資格のため、資格取得はそれほど難しくないでしょう。(※)また、一度修得してしまえば更新の必要はありません。しかし、資格を取っただけでは最低限の操作しかできず、実際には職場での練習や慣れが必要です。工場で重量物をハンドリングする時に重宝される資格です。
※参考:東京都技能講習協会|フォークリフト運転技能講習
機械加工技能士
機械加工技能士は切削や研磨など金属加工の技能を証明する国家資格です。あくまでも技能を証明するための資格ですので、前述の通り工作機械の操作は免許なしで可能です。特級から3級まであり、3級以外は一定以上の実務経験を受験資格としています。等級別に合格率に差がありますが、平成21年度〜平成25年度のデータ(※)によると特級では合格率が20%以下の年度もあり、比較的取得するのが難しい資格と言えるでしょう。
この資格を持っていれば、「機械加工の習熟度」という目に見えづらいスキルを証明できます。新しく入った工場で機械加工の習熟度を理解してもらうときに便利な資格です。
※参考:厚生労働省|技を磨く。技を広げる。
玉掛け免許
玉掛けとはクレーンのフックに積荷を掛けたり外したりする作業です。この作業には国家資格が必要です。正式名称を「玉掛け技能講習」といい、積荷重量1トン以上の玉掛け作業が可能となります。学科講習14時間と実技講習7時間の合計21時間で修得できる資格たのため、資格取得はそれほど難しくないでしょう。(※)
この資格を持っていれば、関連する資格(小型移動式クレーン運転技能講習など)を受験する際に、一部の講習が免除されます。フォークリフト同様、重量物をハンドリングする時に重宝される資格です。
※参考:労働技能講習協会|玉掛け技能講習
まとめ
電子部品工場には電子部品製造オペレーターという仕事があり、さまざまな工作機械を使って材料を加工します。この仕事をしていると、やりがいを感じられたり技術が身についたりするというメリットがあります。
高度な仕事ですが、基本的に資格は必要ありません。しかし、資格を取得することによって人材としての価値が高まり、就職や転職で有利になる可能性もあるでしょう。